本文書は原文書を基に、2026年7月時点の各プラットフォームの実際の無料ティア方針を検証・反映した改訂版である。 原文書に対する訂正事項と追加事項は文末に別途整理した。
1. 要約: 2026年の無料ティアの現実
2022年以降、PaaS業界全体で永久無料ティアが段階的に廃止されてきた。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年11月 | Heroku無料プラン終了(最低Eco $5/月) |
| 2023年8月 | Railwayの永久無料ティア廃止、1回限り$5トライアル体制へ転換 |
| 2024年10月 | Fly.io新規登録者向け無料リソース割り当て廃止 |
| 2025年9月 | Render無料サービスのスリープ時間短縮(30分→15分) |
したがって2026年現在、「本当の永久無料」でPython Webサービスを常時運用できる選択肢はRenderとPythonAnywhereのみであり、残りはトライアルクレジットまたは条件付き無料である。
2. プラットフォーム別比較表
| プラットフォーム | 2026年の無料ティア状況 | 長所 | 短所/制約 |
|---|---|---|---|
| Render | 永久無料ティア維持。ワークスペースごとに750インスタンス時間/月、512MB RAM、0.1 vCPU、帯域幅100GB/月、ビルド500分/月。カード登録不要 | Webサーバー+PostgreSQL+Redis(Key Value)+Cronを一箇所で管理。Git連携による自動デプロイ。Heroku代替の中で最も無難 | 15分間トラフィックがないとスリープ、コールドスタート30~60秒。無料PostgreSQLは1GB、作成後30日で期限切れ(期限切れ後14日以内にアップグレードしないとデータ削除)。セルフピンでスリープを回避する方法は利用規約違反の可能性 |
| PythonAnywhere | 永久無料ティア維持。ディスク512MB、Webアプリ1個(username.pythonanywhere.com) |
Web IDEを提供し、ブラウザ上で直接コーディング・デプロイ可能。Django/Flask(WSGI)に最適化。初心者にとって最も参入障壁が低い | 外部ネットワークアクセスがホワイトリストドメインに限定。カスタムドメイン不可。ASGI(FastAPIなど)サポートはベータ段階で限定的 |
| Vercel | Hobbyプランは無料(ただし個人・非商用利用に限定)。Fluid Computeが標準適用、Active CPUで課金(無料枠内) | FastAPIゼロコンフィグデプロイを公式サポート(2025年9月~)。I/O待機時間には課金しないActive CPUモデル。プレビューデプロイなどDXは最高級。Next.jsフロント+Python APIの組み合わせに強い | 関数実行時間に制限あり(maxDuration設定が必要)。WebSocketなど持続的接続には不向き。商用サービスはHobbyプラン規約違反 |
| Fly.io | 新規登録者向け無料ティアなし。 少額のトライアルクレジット後は従量課金(pay-as-you-go)。レガシープランのアカウントのみ既存の無料割り当て(共有VM3台など)を維持 | 30以上のリージョンにコンテナを配置し、グローバルに低遅延。WebSocket・持続接続をサポート。最小VMは月$2程度と安価 | 無料ではない。Dockerfileなどのdevops能力が必要。イグレス従量課金(アジア$0.04/GB)でコスト予測が困難。レガシープランから離脱すると復帰不可 |
| Railway | 永久無料ティアなし。 登録時に1回限り$5トライアルクレジット(30日)。以降は最低Hobby $5/月+従量課金 | テンプレートベースの超高速プロビジョニング。フレームワーク自動検出、Git push デプロイ。DBプロビジョニングが簡単 | トライアル消化後は有料転換が必須。秒単位の従量課金で予想より請求額が大きくなる事例が頻発。高度なネットワーク設定・コンプライアンス要件には不向き |
| Heroku | 無料プランなし(2022年11月終了)。最低Ecoが$5/月(1,000dyno時間、スリープあり) | 成熟したエコシステム、豊富なアドオンとドキュメント。安定性が実証済み | 最低プランでも決済情報が必須。無料比較対象から除外 |
3. 追加で検討すべき選択肢(原文書にはなかった代替案)
| プラットフォーム | 無料ティア | 適した用途 |
|---|---|---|
| Google Cloud Run | 月200万リクエスト、vCPU・メモリの無料割り当て(カード登録が必要) | コンテナベースのPython API。scale-to-zeroにより小規模SaaSでは実質無料 |
| Koyeb | 小規模な無料インスタンスを提供 | Renderに似たPaaS。ヨーロッパリージョン中心 |
| Cloudflare Workers | 1日10万リクエスト無料、D1(SQLite)・R2の無料割り当てを含む | Python Workersはベータ段階であり成熟度に注意。エッジAPIに適する |
| Hugging Face Spaces | CPUインスタンス無料 | Gradio/Streamlitベースのデモ、MLプロトタイプ |
| Oracle Cloud Always Free | ARM VM(4 OCPU/24GB)永久無料 | 実質的な無料VPS。自己運用の負担は最も大きい |
4. 選択ガイド
- 最も簡単・迅速なフルスタックMVP: Render。ただし無料PostgreSQLの30日期限を必ず認識し、データが重要ならStarter($7/月)以上、または外部無料DB(Neon、Supabaseなど)を最初から組み合わせること。
- Python学習・教育用: PythonAnywhere。Django/Flask学習には依然最適。FastAPI中心なら不向き。
- Next.jsフロント+Python API: Vercel。FastAPIゼロコンフィグサポートにより、原文書執筆時点よりPythonバックエンドとの適合性が大きく改善された。ただし非商用限定と持続接続不可の制約は依然有効である。
- グローバル低遅延・WebSocket: Fly.io。ただし今では「無料の代替案」ではなく「安価な有料の代替案」として分類すべきであり、月$5~20の予算を前提に検討すること。
- 迅速なプロトタイピング後の有料転換前提: Railway。$5トライアルで検証後、自然にHobbyへ移行する流れ。
- コスト0円での常時稼働が最優先: Google Cloud Run(scale-to-zero)またはOracle Always Free VM。
5. 原文書に対する訂正事項
| # | 原文の記述 | 訂正内容 | 深刻度 |
|---|---|---|---|
| 1 | Railway: 「無料ティア内では使用した分だけコストが発生し効率的」 | 永久無料ティアは2023年8月に廃止。現在は1回限りの$5トライアル(30日)のみで、以降は最低Hobby $5/月。「無料ティア」として紹介すること自体が不正確 | 高 |
| 2 | Fly.io: 「寛容な無料ティアを提供」 | 2024年10月に新規登録者向け無料割り当てが全面廃止。レガシープランのアカウントのみ既存の特典を維持。新規ユーザーは少額クレジット後は全面従量課金 | 高 |
| 3 | Render: 「一定時間使用しないとスリープ状態に転換される場合がある」 | 推定ではなく確定仕様。15分間トラフィックがないとスリープ(2025年9月に30分から短縮)、コールドスタート30~60秒、月750時間の上限 | 中 |
| 4 | Renderの短所に無料DBの期限切れが未記載 | 無料PostgreSQLは作成後30日で期限切れ。SaaS運用の観点からスリープより致命的な制約であり必須記載事項 | 高 |
| 5 | PythonAnywhere: 「保存容量500MB」 | 512MBが正確な数値。また「非同期(ASGI)に弱い」は依然有効だが、ASGIベータサポートが始まった点を反映する必要がある | 低 |
| 6 | Vercel: 「長時間実行されるPython作業に不向き」 | 方向性は有効だが記述が古い。Fluid Compute導入(2025年)によりFastAPIゼロコンフィグサポート、Active CPU課金(I/O待機は課金なし)、maxDuration調整が可能になった。WebSocket制約とHobbyプランの非商用限定は依然有効なため、これらを核心的な短所として記載すべき |
中 |
| 7 | Heroku: 「2022年から無料プラン中断」 | 正確には2022年11月28日終了。最低代替案がEco $5/月であることを併記すると比較の文脈が完成する | 低 |
| 8 | 全体: 無料ティア3分類(「永久無料/寛容な無料/終了」) | 2026年基準ではこの分類自体が崩壊。実際の構図は「永久無料(Render、PythonAnywhere)/条件付き無料(Vercel非商用)/トライアルのみ存在(Railway、Fly.io)/無料なし(Heroku)」 | 高 |
6. 原文書に対する追加提案
- 業界トレンドの節を追加: Heroku→Railway→Fly.ioへと続く無料ティア廃止の流れを明示すれば、「なぜ今選択肢がこんなに狭いのか」の文脈が生まれる。
- 代替プラットフォームの追加: Google Cloud Run、Koyeb、Cloudflare Workers、Hugging Face Spaces、Oracle Always Free。特にCloud Runは小規模Python SaaSの実質的な無料運用手段として重点的に扱う価値がある。
- DB戦略を分離して記述: コンピュートとDBの無料方針は別々に動くため(例: Renderのコンピュート無料+DB 30日期限)、Neon/SupabaseなどのDB無料マネージドPostgreSQLとの組み合わせパターンを別項目で案内する。
- スリープ回避に関する注意文言: UptimeRobotなどでセルフピンを行いスリープを回避する手法が広く共有されているが、Renderはこれを異常トラフィックと見なし停止対象とする可能性があることを明示する。
- 検証日の明記: 無料ティアの方針は四半期単位で変動するため、文書冒頭に「基準日」を必ず表記し、公式pricingページのリンクを参考資料として添付する。
参考資料
- Render公式文書(Deploy for Free): https://render.com/docs/free
- Render Pricing: https://render.com/pricing
- Vercel FastAPI文書: https://vercel.com/docs/frameworks/backend/fastapi
- Vercel Fluid Compute: https://vercel.com/docs/fluid-compute
- Railway Pricing: https://railway.com/pricing
- Fly.io Pricing: https://fly.io/docs/about/pricing/
- PythonAnywhere Plans: https://www.pythonanywhere.com/pricing/
基準日: 2026年7月19日。無料ティア方針は随時変更されるため、デプロイ前に公式ページで再確認を推奨する。